燕とびかふ空しみじみと家出かな│大正五年 大正五年四月、大道の種田酒造場が破産し妻子とともに熊本へ移り住んだことは、山頭火の人生の大きな転換点の一つだと言えます。 大道に住んでいた時代は、全国的に「新傾向俳句」が興隆を見せており、山頭火もそ 続きを読む 2023年6月1日
水音のクローバーをしく│昭和七年五月 昭和七年、山頭火は九州を旅したのち、五月三日に山口にやってきました。真っ先に訪れたのは古くからの友人で当時徳山に住んでいた久保白船のところでした。その後、福川で一泊したのち九日には小郡に向かいます。 続きを読む 2023年5月1日
いのちありて浜名湖(ウミ)は花くもりのさざなみ│昭和十四年四月 昭和十四年三月、当時住んでいた湯田温泉の風来居を出発して東上の旅に出た山頭火は、四月に浜松に立ち寄りました。自由律俳誌『層雲』同人の細谷野蕗の家に数日間滞在し、その間に浜名湖めぐりをした際に詠んだの 続きを読む 2023年4月1日
おもひでは菜の花のなつかしさを供へる│昭和八年三月 昭和八年の句。前書きに「亡母忌日二句追加」とあります。 明治二十五年三月六日、山頭火の母は若くして自死します。この出来事は山頭火の中で、生涯忘れることのできない心の傷として残り続けました。母を詠んだ 続きを読む 2023年3月1日
さそはれてまゐる節分の月がまうへに│昭和八年二月 昭和八年二月三日、節分の日の句です。 日記を見ると、小郡の句友国森樹明(くにもりじゅみょう)に誘われて「八幡宮」の節分祭に出かけたことが分かります。 学校から帰宅の途次、樹明君が寄つてくれた、誘はれ 続きを読む 2023年2月1日
あたたかなれば木かげ人かげ│昭和十年一月 昭和十年一月二十五日、其中庵での句です。この頃は二十四節気で大寒、一年で最も寒さが厳しい時期です。 句には「あたたかなれば」とありますが、寒い日が続く時期だからこそ、小春日和のあたたかさが余計にあり 続きを読む 2023年1月1日