今月の一句

燕とびかふ空しみじみと家出かな│大正五年

 大正五年四月、大道の種田酒造場が破産し妻子とともに熊本へ移り住んだことは、山頭火の人生の大きな転換点の一つだと言えます。 大道に住んでいた時代は、全国的に「新傾向俳句」が興隆を見せており、山頭火もそ

続きを読む

水音のクローバーをしく│昭和七年五月

 昭和七年、山頭火は九州を旅したのち、五月三日に山口にやってきました。真っ先に訪れたのは古くからの友人で当時徳山に住んでいた久保白船のところでした。その後、福川で一泊したのち九日には小郡に向かいます。

続きを読む

あたたかなれば木かげ人かげ│昭和十年一月

 昭和十年一月二十五日、其中庵での句です。この頃は二十四節気で大寒、一年で最も寒さが厳しい時期です。 句には「あたたかなれば」とありますが、寒い日が続く時期だからこそ、小春日和のあたたかさが余計にあり

続きを読む