今月の一句

水田青空に植ゑつけてゆく|昭和七年六月

 この句は、昭和七年六月十七日、下関・川棚の木下旅館に宿泊している時期に詠んだものです。山頭火は川棚が気に入り、木下旅館には数か月留まっていました。 この日の日記を引用します。  このあたりも、ぼつぼ

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ひとりひつそり雑草の中|昭和九年五月

 この句は、山々も青くなり、道端の雑草も勢いをつけ始める初夏の時期の句です。  この句は『其中日記』昭和九年五月二十日が初出です。その日の日記を抜粋してみます。  雨、よい雨、風、わるい風、身心すなほ

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後になり先になり梅にほふ|昭和十一年三月

 昭和十年十二月、山頭火は旅に出ました。「ゆきたい方へ、ゆけるところまで」、「死場所をさが」すための旅でした。そして昭和十一年の三月に京都、奈良を巡っています。三月二十三日には、奈良の月ヶ瀬梅渓へ行っ

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