蜘蛛は網張る私は私を肯定する│昭和九年六月 昭和九年、其中庵での句。春に旅先で肺炎を患って入院し、小郡に戻ってきてから一ヶ月が過ぎた頃に詠んだものです。「蜘蛛は/私は」と対の構造がはっきりしており、自然の景物と心情を対応させて詠んでいることが 続きを読む 2024年6月1日
ゆふべしめやかな土へまいてゆく│昭和八年五月 昭和八年、小郡の其中庵での句。前年の九月に其中庵に定住し、初めて迎えた初夏です。 掲句の「土へまいてゆく」は、畑の土へ種をまいていることを詠んでいると考えられます。其中庵で山頭火は、畑を作り野菜を育 続きを読む 2024年5月1日
あるがまま雑草として芽をふく│昭和十年 昭和十年の句。二月の日記で 雑草あるがまま芽ぶきはじめたと詠んでいるのをのちに推敲したのが掲句です。 山頭火は〝雑草〟に対して深い思い入れをもっていました。特に、昭和九年に旅先で肺炎を患い、やっ 続きを読む 2024年4月1日
跫音(あしおと)ちかづきハタと消えたり風立ちぬ│大正五年三月『層雲』 大正五年三月号の『層雲』に掲載された句。「春かへるまで」と題して掲載された十句のうちの一句です。他には、 夢深き女に猫が背伸びせり 山鳴の鳴りうつる山の夕づく日のような句が載っています。 続きを読む 2024年3月1日
汽車も春風のふるさとのなか│昭和八年二月 昭和八年二月の句。 まず、掲句は非常に映像的な句です。汽車の窓から入る春風を感じながら車窓を眺めている様子、あるいは暖かな春風が吹く中を汽車が走っていく風景が、映像として鮮やかに思い浮かぶのではない 続きを読む 2024年2月1日
其中雪ふる一人として火を焚く│昭和八年一月 昭和八年一月二十五日、雪の日に小郡の其中庵(ごちゅうあん)で、次のような句を詠みました。 雪ふる其中一人として火を燃やすこれを雑誌『層雲』に掲載するときに 其中雪ふる一人として火をたくと改作し、 続きを読む 2024年1月1日