企画展「俳句を聴く 山頭火とオノマトペ」

 山頭火の自由律俳句は、五・七・五という音数による韻律はないものの、日本語の“音”を効果的に使ってリズムを生み出している句や、より感覚に訴えるような句が多く存在します。今回の企画展では、山頭火の俳句のうち、オノマトペをはじめとする音にこだわって詠まれたものを紹介しました。展示室で実際に俳句を“聴き”ながら、日本語の音の面白さを味わっていただきました。

<会期>令和5年4月14日(金)~7月2日(日)

1、オノマトペとは
 オノマトペは、日本語では擬音語や擬態語とも言われます。
 オノマトペは「外界の物音や状態を言語音で模写した言葉」であり、「一般語よりも人間の感性や感情に訴えかける力が強く、迫真的描写力を持つ」語です(日本語学会編『日本語学大辞典』東京堂出版・2018)。
 また、オノマトペの形を見てみると、反復、促音(っ)、撥音(ん)等が使われており非常にリズミカルです。
 オノマトペは“感覚的”であり“音楽的”な言葉だと言うことができます。

2、音が象徴するもの
 オノマトペは“音”によって感覚的にその状態や様子を伝えます。たとえば
「ひっそり咲いて散ります」
の「ひっそり」は静かな様子を表していますが、それは「ひそ」という音によって伝わっています。
 この「ひそ」という音は、まさに“静かな感じ”がするのではないでしょうか。その感覚は、「ヒ」「ソ」の発音と関りがあると考えられます。

3、音と意味の境界
 オノマトペは、言語音を使って感覚的に描写をする語ですが、中には、“意味”の領域と“音による描写”の領域があいまいなものもあります。
 たとえば
 ・動詞「たわむ」…「タワム」という音とは無関係に、枝などが重さで弓なりに曲がることを表わす
 ・オノマトペ「たわわ」…木の枝が“たわむ”ほど多くの実がなっているさまを、「タワワ」という音によって表わす
 この二語は意味的に重なるところがあります。オノマトペ「たわわ」は、音による描写であると同時に、「たわむ」の概念的な意味も持ち合わせていると言えます。
 オノマトペの「音」と一般的な語の「意味」の境目は、案外あいまいなものなのかもしれません。