けふの日までは生きて来た寒い風が吹く│昭和十二年十二月 昭和十二年の十二月三日、自身の誕生日に其中庵で詠んだ句です。この句は、木村緑平宛てのハガキの中で次のように書かれています。 今日は私の第五十五回目の誕生日、酒はありませんけれども米はまだありますので 続きを読む 2024年12月1日
さみしい鳥よちゝとなくかよこゝとなくかよ│昭和五年十一月 昭和五年十一月九日の句です。前日に湯ノ原(現大分県竹田市の長湯温泉付近)に泊まっており、そこから現在の由布市にあるJR天神山駅の付近まで歩いています。 当日の日記には、「昨日の道もよかつたが、今日の 続きを読む 2024年11月1日
ふりかへらない道をいそぐ│昭和五年十月 昭和五年十月二十二日に詠まれた句。九月に熊本を出発して九州を旅していた時期です。 「ふりかへらない道」は、ただ前だけを見据えて進む自分の生きる道でしょうか。この年の九月にそれまでの日記や手記を焼き捨 続きを読む 2024年10月1日
いつまでもねむれない月がうしろへまはつた│昭和八年九月 昭和八年に小郡の其中庵で詠んだ句です。 其中庵は東向きに建っており、西側には山があります。其中庵から見て月が後ろにまわるというのは、月が西に傾いたことを表現していると考えられます。 満ち欠け具合にも 続きを読む 2024年9月1日
むしあつく遠雷いちにちとゞろとゞろ│昭和十五年八月 昭和十五年、松山一草庵での句。 湿気の多く蒸し暑い真夏の日、一日中遠くの方で雷がゴロゴロと鳴っているという様子を詠んだ句です。掲句は無駄な語がなく、的確な言葉選びで一句の情景を描写しています。「むし 続きを読む 2024年8月1日
てふてふひらひらいらかをこえた│昭和十一年七月 昭和十一年七月、福井県の永平寺にて詠んだ句です。蝶がいらかを越えて高く飛んでいく情景ですが、「てふてふひらひら」という同音の繰り返しやひらがなのみの表記が、その映像をより美しく見せています。 山頭 続きを読む 2024年7月3日