企画展「雑誌『俳句研究』と自由律」をもっと知りたい!③

山頭火と『俳句研究』

 自由律俳誌『層雲』で活躍していた山頭火ですが、『俳句研究』にも名前が見られます。俳句は作品欄に11回掲載され、うち3回は巻頭に名を連ねました。巻頭に作品が掲載された自由律俳人は山頭火を含め7人しかいません。また、折々の消息が掲載されたほか、昭和15年には同年4月に出版した句集『草木塔』の広告や書評も掲載されています。

「『草木塔』広告」(『俳句研究』第七巻第五号・昭和15年5月)

 このように山頭火が『俳句研究』に名を残すようになったきっかけは、俳句仲間の渡辺砂吐流(さとる)であると考えられます。渡辺砂吐流は山口県阿武郡阿東町(現山口市)生まれで、このころは東京にいましたが、大正5年に『層雲』に入り山頭火と交流をもった人物です。山頭火が渡辺砂吐流に宛てたハガキをいくつか見てみましょう。

改造社の俳句研究、五月号、六月号お読みになりましたら貸して下さい。(昭和9年6月27日)

あなたがおつしやつたやうに、俳句研究八月号に「水音」をだしておきました。(昭和9年7月13日) 

『新編山頭火全集 第八巻』(春陽堂書店・2022)より

山頭火の名前が初めて『俳句研究』に見られるのは昭和9年8月号で、「水音」と題した十句が掲載されています。上記7月13日のハガキで言っているのはこのことでしょう。そして、「あなたがおつしやつたやうに」とあることから、砂吐流に勧められて句を送ったと考えられます。

俳句研究五月号送ります、これは返送には及びません
  (昭和10年5月29日木村緑平宛てハガキ)

俳句研究は自分の作が掲載された号しか貰ひません、そして手許には一冊も残つてゐません、私も続けて読みたいのですけれど買へません
  (昭和13年9月14日松金指月堂宛てハガキ)

『新編山頭火全集 第八巻』(春陽堂書店・2022)より

木村緑平は福岡の『層雲』同人、松金指月堂は岩国の俳友です。作品が掲載された号は改造社からもらえるが、友人に送ってしまうため手元に残らないのだと推測できます。

 山頭火は『層雲』での活躍とそれによる人脈の広がりによって『俳句研究』に名を残し、『俳句研究』によってわずかながら中央俳壇ともつながりをもったと言えるでしょう。